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2010年5月9日日曜日

崩壊に次ぐ崩壊


 今日3本目の映画は友達オススメの西川美和監督作品『蛇イチゴ』でした。この人の『ゆれる』を観たときにこの人の映画は難しすぎてわけわからんというわけで挫折を味わったのを覚えております。どうしてあんなに難しい映画を作るのか恨んだ覚えすらあります。というわけ今回の作品もまったく期待しておりませんでした。しかし!!この映画に関しては・・・同じような挫折を味わいました。。。またこの監督は難しいのをつくりやがりました。難しいというより答えがないというかメッセージ性がないというか、なんていうか観ていて怖くなります。もうひやひやします。多少のネタバレもあるかもしれません注意。

 さて内容はというと書くとなるとなかなかの曲者ですが頑張ります。ある一見平和そうな家庭がありました。その家庭は一見どころか家族の中でもこの家族は幸せだと思い込んでおりました。しかし、ひとりひとりが爆弾を抱えていました。その爆弾が直接的な表現なしに次々に観客に提示されていきます。もうなにがなんだかわからない状態です。しかし、わけがわからぬまま観客はいやおうなしにこの世界に引き込まれます。そしてやがてひとりひとりの爆弾が水面下で爆発しました。終には表面化しました。この家族は音を立てずに崩壊しました。もうそれは崩壊しました。というより、もとより崩壊していました。その崩壊を止めるものは何もありません。そこに家族を救いに来たかのように突然息子が現れました。彼も崩壊していました。彼の崩壊は彼の家族に見えません。ゆえに救いにきてくれたと思い込みます。しかし、もちろん救いません。なぜなら彼も崩壊しているからです。そして、崩壊の先に行きます。崩壊を通り越します。もはや最後には崩壊する部分も残っていません。そして最後に蛇イチゴが残りました。誰も救われませんでしたがなぜか蛇イチゴだけは輝いていました。おしまい。

 こんな感じのぶっとんだ内容です。まぁ怖かった。この人のカメラワークといい、映像の色調といいすべてが怖い。まったく怖いものなんて出てきてないのに怖い。言葉ではなく演技と上記のふたつで崩壊をイメージさせます。そしてさらに痴呆症かなんかのおじいちゃんが怖い。彼は見た目には完全に崩壊していますが、彼が一番崩壊してしません。その対比がたまらなく怖い。あのおじいちゃんは家族の崩壊に気づいているように見えました。たまらない。そしてみんなの演技がたまらない。うまいかなりうまい。というより演出がうまい。やっぱり明快なテーマは感じなかった。たぶんあたいの考えでは西川監督は人間の内面を描きたかったのではないでしょうか。誰もが目をつぶる人間の一面を描きたかったのではないでしょうか。つまり『ゆれる』と似たようなものを感じます。ただこの映画ほうが『ゆれる』よりは怖くなかったです。まだ内容が綺麗でした。友達が言っていましたが、主演を宮迫にすることでかなり和らいだかんがあります。というかあれも監督の意図だったのでしょう。人間は自分の醜い部分を見せまいと必死です。家族にすら隠します。それを見せたら自分という人間が疑われるから。誰もがこの感情を持っているでしょう。本当はものすごい殺意を心に秘めているかもしれない。本当はものすごい性欲を心に秘めているかもしれない。でもたいていの人間はそれを表に出しません。なぜなら犯罪になりうるからです。それを言うなら犯罪者ほど自分という人間のありままの姿を出すひとはいないでしょう。そういうところだと感じました。西川美和監督が描きたかったのはそういうところではなかったのでしょうか。。。と、少しあぶなめの内容になりましたが以上が感想です。好き嫌いは大いに分かれると思いますがこういう作品をみていっぱい考えるのもいいじゃないでしょうか・・・

評価は★★★。まぁ本当に人によるよ?友達はこの映画が大好きです。なんで好きかはまったく理解できません。でもそういう人もいるのです。

1 件のコメント:

  1. 「物語は必ずしも答えが必要な訳ではない、人生に答えが存在しないように。」

    『蛇イチゴ』の怖さってのはハリウッド映画にはなかなか作れるものじゃないと思う。感情移入しまくればホラー映画、だけど離れてみてみるとシュールな笑いもある。


    ”痴呆症かなんかのおじいちゃんが怖い。彼は見た目には完全に崩壊していますが、彼が一番崩壊してしません。”

    →その通りだと思った。人間はある意味みんな異常なのかもしれないね!

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